呪術廻戦の映画を見て、浮かれたクリスマスを過ごした

 呪



知っている人には説明するまでもないと思いますが、私が見に行った映画は週刊少年ジャンプで連載されてアニメ化もされた「呪術廻戦」という漫画の、本編とは独立した前日譚である「呪術廻戦 0巻」の内容を映画化したお話です。


前日譚であるため、本編のみに登場する私の好きな原作キャラクター「両面宿儺」は当然出てこないのですが、それでも見に行って満足の出来でした。
(最近の単行本にもほぼほぼ出てこないので、彼の大活躍というか彼がやらかす悪事を確信してこの漫画を読み始めた私は寂しい限りです)

私は両面宿儺さんのようなラスボスじみた性格が悪いキャラがちゃんと「性格が最悪」「なんとしても止めなければ…」と扱われるのが大好きなので、新しく呪術を読んだ方は是非彼への悪評を私に遠慮することなく呟いて欲しいです!!!!


***

私は普段あまりメジャーな漫画作品にハマる事は少なく、そのため「好きな漫画作品が映画化する」というお祭り気分や経験を味わえたの自体が最高でした。
そして内容も「期待も予想も裏切らない」出来で、満足が行きました。
「原作を読んでいても新鮮な驚きがあった」というわけではありませんが、本当に丁寧な映画化で、文句をつける所がない出来でした。
「こういうので良いんだよ、こういうので」とか言うには贅沢なくらい、「こういうの"が"良いんですよ!!!!!」というアニメ映画化だったと思います。

原作を知らなければわからない内容もない、独立したお話ですので、「原作を全く知らないが、映画を見てみようかな?」という人にもオススメ出来ます。


***

呪術廻戦、何が好きかというと、「承認欲求」「自分は生きていてはいけないのではないか」「人の役に立っていない」という、思春期や思春期をうまく乗り越えられなかった人間、鬱っぽい人間にありがちな悩みや考えを、茶化したりするのではなく、乗り越えるべき自分事として真っ直ぐに描いているのが良いな、と思っています。
映画でも、主人公・乙骨くんのそういう考えがストレートに描かれていて、グッときました。

一般的な少年漫画では主人公は悩みや自省などとは遠い性格で明るかったり「かっこいい」性格であったり、師匠的な大人が「絶対的な正解」を教えてくれる説教臭い要素があったりするんですよね。(それ自体がダメという意味ではなく、一般的にはそういう傾向がある、という話です)
呪術廻戦では、誰もが自分の道に迷い迷って転がり回っている、絶対的正解などどこにもないように見える点に、作者も自分と同じ苦しみを抱えている最中なのだな、という共感を感じられます。

映画版の敵キャラである夏油傑も、本編の漫画を読み進めていると、かつての悩みから今の思想にたどり着いたことが分かり、胸が締め付けられます。
「最強キャラ」の五条先生も全く人格者ではなく、人生の道を教えてくれるわけではありません。
むしろ「正論は嫌い」と言い放つような、ちょっと反抗期の悪ガキっぽい少年時代から少し成長したのが今の五条先生なんですよね…。


「承認欲求」というテーマは、普遍的に色々な人の中に課題として存在しているはずなのに、少年漫画の王道からは排除されがちであったり、「みっともない」ものとして下に見られる事の多かったテーマだと思っています。
そのため、承認欲求や(男性が女性複数からモテるような形以外の)恋愛要素だけをメインに扱った作品は「少年漫画」を冠せなかったり、逆に承認欲求をそれと口に出さなくても満たせるような「本人は普通にしているのにすごいと言われる」というキャラ造形がライトノベルを中心に流行したり…。

自分の中に承認欲求がある、というだけのことを認められないこと、
もしくは社会的に「承認欲求があることは恥ずかしいこと」とされた場合、
結果として人間は承認欲求を隠してしまい、それはいい方向には行かない気がします。

また、BLや現実世界の恋愛、つまり他人からの救済に「承認欲求の解消」「自己肯定感の回復」を求める人も多くいます。
そのような願望が作品になったとき、「自分の努力では自己肯定感が回復できず、他人に助けて貰うしかない」という誤ったメッセージ性として働いてしまうこともある、と感じています。


呪術廻戦は「この話に描かれていることはなるほど正しい」と思わせるような作風ではありませんが、しかし、「行動し、人を助ける」という少年漫画的なテーマと並走する形で自己の悩みの解決が語られていることに、私は大きな価値を感じています。
そして、そういう作品がジャンプの看板作品として、アニメ化したり映画化したりしている(鬼滅の後釜としてのタイミングの良さもあったのでしょうが…)現状を、なんだか嬉しく思います。



まとまった感想としては以上になります。
以下に映画の雑多な感想を箇条書きとして書き残して終わります。


***

・乙骨=CV緒方さん=シンジくんが「原作者からのオファー」なのは「そうでしょうね!!!」としか…

・CVめちゃくちゃ豪華でした

・日下部が三木さんなの「わかり」が過ぎる…

・耳が良くないのであんまり実感はなかったですが、夏油は本編と映画で演技が違うっぽいみたいで声優さんってすごいぜ(声がついたことによって夏油の狂気や理想や悲しみみたいなものが重厚に感じられて非常に良かったです)

・アニメオリジナルとして、アクションシーンや本編キャラの活躍シーンが足されてたの良かったです

・ミゲルが山寺さんマジ!?!?

・0巻漫画だけ読むとあまり意味の伝わりにくい「MVPはミゲル」という作者さんの言葉が、アクションシーンの増量や五条先生の強さの誇張によって非常に伝わりやすくなっていました(ミゲルが五条先生の足止めを10分以上、という原作では他に誰にもできなさそうな役割をちゃっかりしっかりこなしている、という話)

・五条先生ビル壊さないで(原作だと壊してなかった気がする)

・本編キャラのCVも超豪華なんですけどこの一瞬の出番のために…と思うとお金をケチってないのが伝わってきます

・秤は流石に出てこなかった

・メカ丸と三輪ちゃんのファンの人が喜びそうな感じのシーンも用意されていて抜かりなかった…

・原作もしっかり現実の背景を取材して描くタイプなのですが、アニメオリジナルシーンもロケハンがしっかりしており、ナナミンが戦ってるのが「京都駅前(のヨドバシ横)だ!」という事が分かる人には非常によくわかる背景づくりになってました(京都タワーも映る)

・京都校生徒が戦ってるのが京都の祇園、幼少期の乙骨と里香ちゃんが遊んでる公園は仙台の榴岡公園ではないかという話です

・伊知地さん(七海さんも)、大人は子供を守らねばという意識あるの良いよね

・そういえば作画が良い・背景も良い中でも特に、作品冒頭のシーンは背景美術が綺麗でした お寺とかが好きな人にはグッとくる光景

・私は森に癒されるので全編背景が森!!! て感じだったので結構好きでした こういう背景描けたら良いのにな~

・どのくらい3DCGを使ってるのかな

・エンドロール最後まで見た方が良い系の映画でした

・でも原作読んでない人は最後の最後は「?」かもしれない…

・音楽に関する感性が浅いため、エンドロールに二曲詰め込まれているのは扱いとしてどうなのだろう? と思いましたが、楽曲自体は雰囲気に合って感じたのでまたちゃんとゆっくり聴いてみたいです

・原作読んでるから普通に新鮮な驚きはあまりなかったですが、普通に何回か泣きました

・好きなフィクションを見て流す涙は健康に良い

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