楽観主義を身に付けるための読書「オプティミストはなぜ成功するか」


kindle unlimitedで読みました。


この本の内容はいたってシンプルだと感じました。

「悲観主義」や「楽観主義」がそれぞれ何を引き起こすのか

「悲観主義」と比べて「楽観主義」がどのように優れているか

を、実験の結果やデータを挙げながら非常に丁寧に検証していき、最後に

では、今から「楽観主義者」に変化するにはどうすればいいのか

という具体的な手法について書かれています。


いわゆる「認知療法」と言えるような内容が取り上げられた本であり、
実際にここに書かれている内容は実践すれば鬱に非常に効果があり、再発を予防する効果もあるとのことです。

自分はネガティブかも、もしくは自分は物事を楽観的に捉えることに苦手意識がある、という人には特にオススメできる本です。


旧来、精神医療は「悪い所を直す」「マイナスをゼロにする」事に常に焦点を当て続けており、「プラスを増やす」意識を持っていなかったそうです。
そして、マイナスを直しても、プラスにはならないのです。

それが、この本の筆者のセリグマン博士の研究をきっかけに、今日では「ポジティブ心理学」という分野が生まれるまでになった、とのこと。

また、筆者も元々は自分では悲観主義について調べているつもりだったそうで、それが何故楽観主義をテーマにするようになったのかも文中で触れられており、人生ドラマ的な物語性まで感じられてきます。

***

自分と鬱についての話をします。

精神医療においては、「薬」による治療が必要不可欠です。
かくいう私も、服薬によって重い鬱症状がかなり改善した経験があります。
また、鬱の原因になる不眠(それによって積み重なった睡眠負債)なども薬によって解消することができました。
お薬さまさまです。

ただ、ぶっちゃけて言うと、
薬「だけ」では鬱って直らないな~
というのも、私の実感としてあります。

もちろん、薬に全く意味がない、という意味ではないです。
マイナス(鬱状態)から0(鬱ではない状態)に戻すためには薬は非常に有効です。
特に重度の鬱状態にある時に他の自助努力を取る事は既に難しく、飲んで休むだけで症状を緩和してくれる薬は非常に有効です。

しかしそれ自体は、世の中の見方をプラスに、「明るく」してくれるものではない。

この本によれば、そして現代の人間の一般的認識としても、元々鬱になりやすいのは悲観的な物の見方をするタイプの人間であるということです。
そして服薬や休養によって「鬱の辛い症状が消えた」としても、悲しいことですが「重篤な鬱症状が出ていない、悲観的な物の見方の人間」が誕生するだけだと、我が身をもって感じるようになりました。
(日本人が良い性格として見がちな「物事の原因を自分個人に帰す考え方」「言い訳しない真面目で責任感のある人間」「現実的で物の見方が前向きすぎず正確」な人間も、この本では「悲観的な人間」としてカテゴライズされています)

そこから先、マイナスをプラスにし、プラスを更に増やしていき、人生を豊かにすることが必要なのだという考え方が、この本に書かれた内容でした。
物の見方を前向きにしていき、楽しみ、挑戦していく姿勢を習慣として得ること。

本当の本当に、今後の私にピンポイントで必要な内容です。

日本人的な自責や真面目性格を「望ましい性格」と今まで日々思い続けて生きていた度を超えて悲観的な私にとっては、この本に書かれている「楽観主義」的考えは、「言い訳が過ぎない!?!?!?!」「本当に前向きな人ってこんな考え方してるの!!??!?」「適当すぎんか!?!?」「本当にこの考え方、『良い考え方』なの!?!?」と、カルチャーショックを受けることもあったのですが…。
それでいいらしいです!!!!!

実践していければいいなあ…と思っています。


***


文中に、「学習的無力感」を感じるようになった犬の話が登場します。
与えられるショックから「何をしても逃げられない」と誤った学習をしてしまった犬は、逃げることが可能な状況でも逃げることを諦めてその場に座り込んでしまう。

これは私だ、と読みながら感じていました。
「学習的無力感」とは、要するに人間で言う所の「鬱状態」と同じ物です。本来ならば学習などしなくていい物ですし、実験の対象が人間になると、これに陥らない人も多々(簡単な実験では1/3ほど)いるようです。


非常に悲観的な人間は、外部から見ると非常に楽観的に見えることがあります。
どんな危機が訪れるかわからない状態でも、何もせずに構えているかのように見えることがあるからです。
実際には、本人は「自分にはどうしようもない」という過度の諦めを抱いており、実験を受けた犬のようにその場にへたり込んでいる状態であったりします。(その状態が良いことではないのは、言うまでもありません)

(「不変」を世界観の基礎に据えてしまう人も、このような「自分には何かを解決したり変える力がない」諦めの心理状態から出発しているのかもしれません)

一方で楽観主義者は「自分で物事をコントロールできるし、したい」と考えるため、病気の予防や治療などにも積極的なようです。
こちらも、一般的イメージとは逆かもしれませんね。


本の中では、学習性無気力についての実験がどのような結果になったのか、そこからどのような結論が導き出されたのかも丁寧に書かれており、面白かったです。


幸い、人間には知性があり、他の人の体験や考え方を学ぶことができます。
学習性無気力=鬱状態から抜け出す方法もあり、一生その状態が続くわけではないはずです。
この本に書かれている、「楽観主義的な物事の説明方法で自分に物事を説明する」「悲観的な自分の考えに反論したり、気を逸らす」手法は、鬱からの回復、そして再発の予防にもとても役立つ手法のようです。
「考え方」をまずは自分でコントロールしよう、という話です。

「行動しよう」という話ですらないのがすごいですね。
実行ハードルが低い…。
実際には勿論、適切な考え方をした上で適切な行動をしよう、という意味合いも多々含まれているとは思いますが。

ネガティブな人間がよく「自尊心の回復」のために思い描きがちな、「親や恋人に愛される」とか、「大勢の人間に承認される」「他人より優れる」「大きな成功を収める」のような話は、解決策として全く出て来ません。
実行ハードルをぐいぐい下げてきますね……。

そもそも「条件を満たせなければ自己愛を持てない」「自分はいつもダメだ」という考え方こそが「悲観主義」的であり、逆に「自分はいつもツイている」「今回だけは不運だった」と幸福を普遍的/恒常的に、不幸を限定的/一時的な物として語る考え方こそが「楽観主義」なのだと、この本を読むとより具体的に分かりやすく理解できるようになりました。


非常にためになる本だったので、興味がある方は、是非読んでみて欲しいと思います。

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